緊急声明:離婚後共同親権について DV の現実に即した議論を求めます
NPO 法人日本フェミニストカウンセリング学会 理事会
フェミニストカウンセラー協会 理事会
フェミニストカウンセリングアドヴォケイター協会 理事会
私たちは、心理カウンセラー、ケースワーカー、DVシェルターでのアドヴォケーター、性暴力・DV裁判のサポーター、サバイバー等が参加し、研究・実践を行っている団体です。フェミニストカウンセリングの根本理念は、「personal is political」(個人的な問題は政治的な問題である)であり、さまざまな女性の問題は、その女性の個人的な問題ではなく、社会の問題であるという視点に立ち、問題解決にあたっています。 セクシュアルハラスメント、ドメスティックバイオレンス(DV)、性虐待、性暴力などの「女性への暴力」について、社会的に関心がもたれるずっと以前からその存在を明らかにし、社会に問題提起し、その解決のために様々な取り組みをし続けてきました。そして、治療的なトラウマカウンセリングや裁判支援のためのアドヴォケーターとして、意見書作成などに取り組んできました。
会員には地域で DV 被害者の相談を受けている者が多く、そのような立場から離婚後共同親権の導入に関する議論の動きに強い危機感を抱いています。
法制審議会家族法制部会の要綱案(案)について、マスコミは”「DV の恐れ」は単独親権” “DV なら単独親権”等と報じています。しかし、離婚後共同親権を導入しても DV・虐待ケースは除外できるという考えは机上の空論であり、当事者に危険をもたらすものです。
DV 被害者は加害者から精神的にも支配・コントロールされていることが多く、DV を受けていても自分が悪いからだと自分を責め、それが DV だと気づくのに時間がかかることが少なくありません。また、DV に気がつき、逃げることができても、加害者が怖くて、なかなかその支配・コントロールから自由になることもできません。
要綱案(案)は、協議離婚の場合、当事者の合意のみで離婚後共同親権となる制度です。DV による支配のある関係性で、「真摯な合意」が保障されるわけがありません。また、裁判離婚の場合でも、DV 被害者が DV であることで単独親権を申し立てることはとても困難です。要綱案(案)は、DV 被害者が DV を立証できなければ、当事者の合意がなくても、裁判所が共同親権を命じるという恐ろしい制度の導入です。
共同親権は対等に話し合い、きちんと折り合いがつけられる関係性が前提になりますが、DV 関係ではそのようなことは期待できません。DV による支配・コントロールから離婚によって逃れようとしても 、共同親権によって子どもが成人するまでは支配・コントロールから自由になることはできません。
全国の DV 被害者と子どもが、支配・コントロールから逃れて安心して生活できるように、DV 被害者に共同親権が強いられるような結論は出さないでください。
以上