「インターセクショナリティ(交差性) とレイシャルトラウマ」
まもなく、『部落フェミニズム』という一冊の本が発刊される。ネットに「ないものとされてきた存在を可視化する、部落女性9人による実践と思想」と紹介があがっている。私もその著者の一人だ。以下のサイトから、本の目次と前書きが読める。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909910271
二年くらい前、編著者の熊本理抄さんから「同時代、次代を生きる部落女性に向けて発信したい。発刊までの過程を重視し、執筆者が共同でつくりあげていくものにしたい。部落女性の思想と実践に、執筆者各人の思考と経験を交差させながら、今私たちが考える部落フェミニズムを浮き彫りにしたい。そこで生まれる矛盾と葛藤もそのまま言語化したい」(前書きから)と、執筆の依頼があった。二つ返事で引き受けた。「概念を用いずに、インターセクショナリティを実証すること」を重視したいと言う熊本さんの姿勢にも共鳴した。
9人の部落女性がオンラインで何度か話し合い、対面でそれぞれの原稿について感想や意見を交わした。オーストラリアの精神科医オイゲン・コウ博士を知っている人が偶然にも複数人いて、驚いた。部落差別という地点から、トラウマインフォームドケアや世代間伝達トラウマをキャッチしていた部落女性の存在に勇気づけられる。初めて会った人がほとんどだが、語りだすと何年も前からの知り合いのようだ。久しぶりに部落の「あるある」や地域の違いなど語り合える時間となった。そのあと、部落女性として実名で本を出す葛藤が語られていく。出自を公開することへの逡巡、葛藤こそが部落差別そのものである。私と共著者たちは、これら逡巡、葛藤を一緒に抱えながら『部落フェミニズム』を発刊する。
私は、ささやかではあるが日本のフェミニズムとフェミニストカウンセリングへの異議申し立てを書いた。「あなたは私と共にインターセクショナリティ(交差性) とレイシャルトラウマへのアプローチをするのか?」という問いかけでもある。『部落フェミニズム』を手に取り、思考を深められんことを願う。
※この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。