2月1日のぱたぱた日記

コロナで生活が一変して1年がたった。ステイホーム中に見つけたYouTube番組がある。ホームレス支援からはじまり、30年以上に渡って困窮している人の支援を続けてきたNPO法人“ほうぼく−抱樸”の代表奥田知志さんの対談動画だ。奥田さんは福岡県北九州市にあるプロテスタント教会の牧師で、SEALs(平和安全法(安保法制)に反対する「自由と民主主義のための学生緊急行動2015〜16」)の創設者、奥田愛基さんのお父さんでもある。
新型コロナ感染拡大の影響を受け多くの人が家や仕事を失っていく状況下において、抱樸はすぐさまクラウドファンディングをスタートした。「ひとりも取りこぼさない」という理念のもと、家や仕事を失った人が利用できるサブリース型「見守り支援付き住宅」の普及のための資金集めだという。支援の主な対象者とされるいわゆる「ホームレス」に対する私のイメージは恥ずかしながらとても貧しいものだった。今は女性や若者のホームレスも増えていると言われている。それでもやはり「おじさん」のための支援だろう、と思いながらこれまで利用してきた人たちの内訳をみると、DVから逃れてきた女性、シングルマザー、障害のある女性なども対象になっていた。
抱樸はその時々に出会った人の必要に応じて支援の幅を広げてこられたという。30数年間の活動で出会った人の中には当然、女性も子どももいたのだ。その時々の必要に迫られて工夫を凝らし、方法を模索しながら支援をしてこられたのだと思う。つまり間口がとても広い支援なのだ。「ひとりとの出会いを大切にし、人を属性でみないという在り方を求め続けた」(『逃げ遅れた伴奏者』本の種出版 2021)結果なのだと思う。YouTubeでの対談相手は、貧困問題や障害者問題などに関わりのある著名人や社会活動家などバラエティに富んだもので、活動分野、性別、年齢、そして思想信条、宗教なども様々だった。もし奥田さんが、キリスト教の牧師であるという自分の立場を固持していたら対談相手もこれほど多岐にわたらなかったと思う。その柔軟さにも感心した。
クラウドファンディングでは3ヶ月の間に「1億円を集める」という目標が掲げられた。そんな短期間に1億円も集められるだろうかと、きっと多くの人が思っただろう。でも、10万円の給付金が出てすぐだったこともあって募金活動は盛り上がり、結果的に10,289人が参加し、1億円を突破してなんと115,798,000円も集まったのだ!
コロナ禍において奥田さんは「たとえ離れていても家からできることをやろう」と呼びかけた。「感染予防のために人と距離をとること(ステイホーム)は大事なことだけれど、それだけでは人は生きられない。家からできること(フロムホーム)を考えよう。たとえ離れていても、私たちは寄り添うことができるのだ」と。その言葉が人々を動かしたのだと思う。
フェミニスト・カウンセラーである私は、助けてと声を出せない人に寄り添っていけているだろうか?フェミニズムを知らない人や支援者たちと、対等な立場で視点や考え方を共有することができているだろうか?属性で人を見てしまい、関わりの間口を狭めていないだろうか?
私には抱樸の活動とそれを支える理念がとても眩しく見えた。そして自分に問いかけられているように感じた。

※この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。