2つの「国葬」

英国のエリザベス女王が96歳で亡くなった。
静養中の朝、健康状態の懸念が示され、その日の夕方に安らかに息を引き取られたという。

1952年にわずか25歳で王位を継ぎ、今年2月に即位70年を迎えていたという女王は、国民の75%が「好き」と答えるほど慕われていたという。

思い出すのは、2012年のロンドンオリンピックでジェームズ・ボンドにエスコートされ、パラシュートで舞い降りた女王の姿だ。もちろんスタントを使っているのだが、あの演出を面白がっていたという女王は、キュートでおちゃめなおばあちゃんだった。

エリザベス女王は、在位70年の間に様々な王室改革をしたという。バッキンガム宮殿での貴族の娘のお披露目を廃止したり、ロンドンオリンピックのあった2012年には、300年以上つづいた王位継承の「男子優先」が「最初に生まれた子ども」へと見直された。

1997年のダイアナ元皇太子妃の事故死の折には、王室の対応が冷たいとして王室廃止論が高まったが、エリザベス女王は「自分よりも公務を優先する、英国人の模範」として、尊敬を集めていったという。

国葬は19日に歴代国王の葬儀が行われてきたウェストミンスター寺院で行われる。

一方、日本も「国葬」に揺れている。

安らかに天寿を全うされたエリザベス女王とは対極の、銃撃によって死亡した元首相の国葬には、反対の署名が40万筆を超え、各地で抗議活動が行われている。大手メディアによる世論調査でも反対が過半数を占め、賛成を大きく上回っている。主な理由は「法的な根拠がない」だ。

この事件によって、憲法に「政教分離」がある国の政府自民党と旧統一教会の強固なつながりが、今も次々に明らかになっている。

ふたつの団体に共通するのは、家族や性に関する価値観で、元首相は「ジェンダーフリー」や「性教育」のバッシングを精力的に行い、教育基本法の改正法案を強行採決した。

森友学園をめぐる公文書改ざんや加計学園問題、「桜を見る会」問題、いわゆる「モリ・カケ・サクラ」の不正疑惑も解決を見ていない。東京オリンピックの汚職容疑者も続出している。コロナ禍対応では、専門家の意見を聞かず、根拠のない感染対策を連発。世帯に2枚ずつ郵送された「アベノマスク」は、543億円の税金を使って大失敗に終わった。

岸田首相が説明した国葬の理由に「憲政史上最長の8年8カ月にわたり重責を担った」というのがある。立場の違いがあるから、エリザベス女王と比較するのは無理があるにしても、70年と8年8カ月。

国葬の費用16億円はもちろん国民の税金から賄われる。東京五輪が7340億円の当初予算を大幅に上回る総経費1兆4238億円と倍増したことを考えると、16億で済むのか?という疑問も膨らむ。そのお金を教育や福祉に使おうという発想はこの国にはないようだ。

近く予定されている2つの「国葬」。じっくり比較していきたい。

※この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。