「改正災害対策基本法の欠格条項」
今国会で「災害対策基本法等の一部を改正する法律(以下、改正法)」が可決された。この改正では、従来の「避難所(=場所)の支援」から「避難者等(=人)の支援」に方向転換がされ、避難所に避難していない被災者にも(福祉的)支援が届きやすくなることが期待されている。また、ボランティアとして被災地支援を行う団体の事前登録制度も盛り込まれている。地震、豪雨などが頻発し、災害が多い昨今の状況を考えると、避難所に行かずに車中泊をしている被災者や半壊の自宅で暮らす被災者にも必要な支援が届きやすくなり、ボランティアによる被害者支援も迅速に行えるようになる…歓迎すべき法改正だったはずなのだが、その事前登録制度は大きな、大きな問題だった。
改正法は「第33条の2の第3項」で、登録できない団体(欠格条項)を定義している。そして、団体の役員が「アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者」(第3項2号のニ)、「心身の障害により被災者援護協力業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの」(第3項2号のホ)は登録できないとある。参議院予算会議では、れいわ新選組の木村英子さんの質問に、坂井防災担当大臣が「内閣府令においては、被災者援護協力業務を適正に行うに当たって、必要な認知、判断及び意思疎通が適切に行うことができない者と規定することを現在考えております。これは、法律が改正をされて以降、内閣府令において規定をするということになります」と答弁した。 なんということだろう?!! 自分の目と耳を疑った…令和の時代の法律に「中毒者?!」「心身の障害を持つ人は被災者支援ができない?!」。時代錯誤も甚だしい。
障がいを理由に排除しているとしか読めない条文であることや、「依存症」という言葉が普通に使われるようになっているにも関わらず「中毒者」とスティグマとより強固にリンクしている言葉をわざわざ使っていることなど、言いたいことは山ほどあるが、これを依存症や障がいを持つ人が読んだ時にどんな気持ちになっただろう?と思うと、胸が痛い。これまで災害が起こった時に、障がい者団体や依存症からの回復支援団体が被災者支援をしてきているにも関わらず、国が定める法律によって差別、排除される…。これは、国による依存症や障がいを持つ人への精神的暴力に他ならない。この状況のなか、依存症や障がいを持つ人は、この国で安心、安全を感じ生きていけるのだろうか? そして、私は、この国で安心、安全に暮らしていけると思えるのだろうか?
法律は可決されてしまった。内閣府令のパブリックコメントも終わってしまった。でも、まだ「終わったこと」にしてはいけないと思う。「私」を含む、この国に住む全ての人が、暴力をふるわれることもふるうこともなく、安心で安全な人生を過ごせるようになるためには、このことはまだ「過去」にはできない。
※この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。