「怒りたいわけじゃないのに・・・」
あれは何歳の頃だっただろうか?近所の子と怒鳴りあいをした後に、隣の家の人が「明日香ちゃんは大丈夫なの?女の子なのに、あんなふうに怒って…」とわざわざ私の母親に言いに来た。わざわざ言いに来る?と腹が立った。私は、よく怒るので、このようなエピソードがたくさん。年齢を重ねたおかげか、なぜ怒っているかを他者に説明することは上手くなったが、子どもの頃は上手く説明できるわけもなく、「なにを怒ってるの?! 怒るようなことないでしょ」とよく怒られた。『怒るようなこと』があるから怒っているのだけどな、と思っていた。その頃から、ずっと思っているのが「なにも怒りたいわけじゃないのに…」だ。
いろいろなことにハマりやすい私は、動画サイトで海外ドラマを観ることにハマり続けている。しかも、一つドラマを観たら、その作品のスピンオフ作品まで全て観る。今、観ているドラマは刑事もの。ネタバレになるので、ドラマの名前は伏せるが、警察のある部署のトップが主役で、彼女を中心に犯人を追い詰め。捕まえる。このドラマはスピンオフ作品で、前作も同じ部署のトップが主役。10年以上前に作られたドラマだが、女性が警察のかなり重要な部署のトップで、捜査を仕切るのが気に入って見始めた。というより、このドラマで気に入ったのはその一点だけなのだが、それだけで見続けたのだ。
ところが、何シリーズも見続けて、いよいよ最終シリーズの最終回まであと4話というところで、主人公の女性が、ある犯罪者に怒り過ぎて心臓発作を起こし、死んでしまった。思ってもいなかった展開に絶句。そして「裏切りだ!こんなのあり得ない!前の作品の女性トップの描き方も、この作品の女性トップの描き方も気に入らなかったのに(どう気に入らなかったかを書きたいところだが、ネタバレするので省略する)、我慢して、我慢して、ここまで観たのに、これ?!」と、スマホに向かって怒りを一通りぶつけ終わった後に、ふと「あの女性トップは怒って死んだんだっけ?!もしかして未来の私?」と思った。
そして、男性が怒り過ぎて心臓発作を起こす展開は何度か観たことがあるけど、女性が怒り過ぎて心臓発作を起こすのは初めて見たのかな?と考え始めた。これは、女性の怒りも男性の怒りと同じように扱われだしたということ?それとも、女性の怒りはタブーだから、怒り過ぎた彼女は罰として死んでしまったの? …最後には、一周回って、「このドラマの女性の描かれ方は気に入らない」に行き着き、また怒る…。
2024年も終わりに近づいている今日、ニュースを見れば、怒りを感じる出来事が目に飛び込んでくる。だから、穏やかに過ごそうとドラマを観れば、「女性」の描かれ方があまりにひどくて腹が立つ。文頭に書いた「明日香ちゃんは大丈夫?」エピソードからかなり年齢を重ねているが、やっぱり「怒りたいわけじゃないのに…」と思っている。でも子どもの頃と違うのは、私の怒りを聞いてくれる人がいる、私の怒りに共感してくれる人がいる、同じようなことに怒りを抱く人が周囲に増えたこと、そして多様な怒りの表現をみせてくれる人たちがいること。怒りを感じる出来事が当たり前のように起こる世の中を生きているのなら、暴力以外の多様な怒りの表現を『武器』に2025年も《personal is political》に過ごしていきたい。
※この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。
※この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。