「信じられるものは…」
コロナ禍で始まった活動が5年目となり、先月地域で第7回目の女性相談会をおこなった。年に2回ほどのペースで続く物品提供と無料相談の一日。昨年からは「女性相談カフェ」として、お茶菓子だけでなく、おにぎりと汁物を提供し、編み物や小物作りのワークショップをするなど、ゆっくり居られるスペースも設けている。サポートスタッフ、弁護士、専門相談員、市議会議員も合わせて40名近い協力者はもちろん原則、女性のみ。私は主催事務局と女性相談の一員として関わっている。
受付開始の20分前には入口に行列ができ始めた。市内各地のフードバンクや子ども食堂からのお米や食品配布、0円フリマと呼ぶ衣類や日用雑貨の提供があると知っている方たちだ。今回は5時間の受付時間で60名以上の来場者があり、うち30余名の相談を受けた。初めて10代(19歳)の相談者があり、これまで少なかった20代の若年相談者が増えた。赤ちゃん連れのシングルマザー、海外ルーツの母子、家族の虐待から離れたいと他市から来た女性もいた。回を重ねるとリピーターも増え、上は80代まで、さまざまな困りごとの経過報告の場にもなっている。
仮放免中の夫をもつAさんは子どもが小学生と保育園児。夫は就労も許されず、今後の暮らしは見通せない。そんな中でも地域の日本語教室に通い、パート職に就いたり学校行事に参加したり必死で子育てをしている。母語が英語以外の女性が出産・子育てをする際には、健診や予防接種1つとってもきめ細かな情報提供やケアがなければ母子保健の当然の権利にすらアクセスできない。行政の手は伸びず、移住者支援団体の通訳を頼みに、地域のスタッフが学校などの通知が来る度に支援する。
70代1人暮らしのBさんは年金だけでは足りず生活保護の医療単給を受けている。病院に行く交通費は出るが、法テラスの相談に行く交通費は出ない。その捻出のために大好きなコーヒーを飲むのをあきらめたという。「首相が女性になって、あの人は世襲じゃなくて庶民の家の娘さんなら少しはと思ったけれどね。軍事費は上げて、2万円の給付はなくなるんでしょ。下々(しもじも)の暮らしなんか想像もつかないんでしょうね」。フルタイムで働き続けても非正規雇用が長かったため貯金はできなかった。
折しも読み始めた『新しい階級社会』(橋本健二、2025)では、現代日本の「格差拡大は男性と女性で異なる意味をもち、結果的に多くの女性が、最下層階級への転落を余儀なくされるようになった」p.10)という。この世界には、男と女という「階級」があると断言し、豊富なデータ分析と私たちにはすでにお馴染みのフェミニズムの視点(家父長制と資本制による搾取)を入れ、深刻化・固定化する格差の実態を解説されていた。外国人への排斥を語り、強者にぶら下がって、株価が上がれば経済は良くなるかのような政治家の嘘はもう聞きたくない。
ところで1つ嬉しいことがあった。4年前、コロナ禍で娘さんの大学費用の心配で参加されたシングルマザーのCさん。かつて冬物のコートや食品、奨学金申請の情報などをサポートした娘さんが大学4年生となり、このたび教職採用が決まったとのこと。ここまでがんばってきて本当にほっとした、良かったと大粒の涙をホロホロとこぼされ、私たちも一緒に喜びの涙を流すことができた。しかも、今回彼女はその報告とともに、勤め先に許可を得て不要な備品を台車に山もり積んで、女性相談カフェに提供してくれたのだ。自分が助けられたから今度は助ける側へと行動してくださった一人の女性の存在は、主催側の私たちの心を一押しも二押しもして、開催までの疲れを吹き飛ばしてくれた。これがあるからなぁ。
信じられるのはこのシスターフッド。やっぱり、まだやめられないな…。
※この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。

